美しく風情のある建物だった玉前神社の旧社務所「白寿庵」。前号では屋根について述べた。今号では部屋について述べる。
写真1を見ていただきたい。風情のある部屋に、立派な身なりをした人物4人が何かの会合で集まったような様子である。下座にいる若者を除き、3人は口ひげを生やしている。撮影時期は、こうした口ひげが流行した昭和初期ごろかと思われる。さて、この4人が集まった部屋はどこだろうかと思う。そのヒントになるのが、写真左 の明かり障子の上に見える三つ巴紋である。
写真2を見ていただきたい。これは南東隅から見た白寿庵である。奥に神輿蔵も見える。白寿庵の雨戸の戸袋右の明かり障子の上を見ると、印刷ではっきり見えないかも知れないが、写真1の明かり障子の上に見える三つ巴紋がある。よって、写真1は白寿庵内部の写真であることが判明した。
図は、白寿庵再建のために解体前に調査したときに作った平面図である。写真1を写した部屋は、図の左上の床の間のある部屋である。
白寿庵は素晴らしい近代和風建築だった。 白寿庵が移築再建されようとしている今、当時の風情を再現するには、写真画像が不可欠である。白寿庵の内部の写真はめずらしく、当館でもこれ1枚しか所蔵していない。白寿庵が写った写真をお持ちの方は、ぜひご連絡をお願いしたい。
睦沢町立歴史民俗資料館 学芸員 久野一郎