(4)曳家と撮影時期

玉前神社の現在の社務所は、1941(昭和16)年に建築された。旧社務所白寿庵はこれに先立ち、曳家(ひきや)されて北側に移動した。当館に所蔵されている白寿庵の画像には、移動前後両方のものが残されているが、建物本体からでは移動の前後はわかりにくい。しかし前庭の様子や植栽などから推論できることがわかった。
古い写真に見る白寿庵(4) 写真1

写真1

古い写真に見る白寿庵(4) 写真2

写真2

写真1は建設直後ごろの現在の社務所で、建物の前に枝ぶりのいい五葉松が見える。この木は現在でも健在である。写真2は白寿庵で、この松の木が見えることから、曳家以前の姿であることが判る
白寿庵の土台がある地面と松の木のある地面とはかなりの段差があり、右側には大きく幹を伸ばした松の大 木も見える。つまり曳家以前の白寿庵には、敷地の段差と松の木があったのである。

古い写真に見る白寿庵(4) 写真3

写真3

古い写真に見る白寿庵(4) 写真4

写真4

この原則から以下のことが推論できる。写真3には左に五葉松、右に松の大木が見えるので、曳家以前の白寿庵である。写真4も段差が見えるので、曳家以前である。 よって、以上の写真は1941(昭和16)年以前の撮影である。

古い写真に見る白寿庵(4) 写真5

写真5

古い写真に見る白寿庵(4) 写真6

写真6

一方、写真5には段差がないことから曳家以後の写真で、写真の左上角に現社務所の軒先も写っている。写真6には段差が確認できないので曳家以後のものかと思われるが、画角が狭くて確認できない。しかし写真の左端に写っている桜の木が、写真5の左の方に写っている木と同じでさらに左下の階段は現存するものなので、曳家以後のものと確認できる。よって写真5と写真6は、1941(昭和16)年以後の撮影である。こうして当館所蔵の白寿庵の写真の大部分の撮影時期がわかった。
白寿庵の再建計画には、撮影時期などの詳細を示す写真が不可欠である。白寿庵が写った写真をお持ちの方は、ぜひご連絡をお願いしたい。

睦沢町立歴史民俗資料館 学芸員   久野一郎